氷上トレーニング体験記 「氷上トレーニングのススメ(その1)」

2012/03/27

今回から3回にわたり、会員から寄稿された体験記を皆さまにお届けします。

 

寄稿してくれたのは、昨年、今年と2回の八千穂レイクで行われたウインタートレーニングに参加していただいた、しとやかなポルシェ乗り、I.H.さんです。

 

5年前にフィンランドのウィンター トレーニングに初参加したI.H.さんが、勇躍に取り組み、壁にぶつかり思い悩み、思うこと(理論)と行うこと(実技)との隔たりに自問自答し、そして開眼するまでの記録です。

 

この進歩の記録をお読み頂くと、氷上トレーニングはなぜ4日間行われるのか、ポルシェクラブ六本木の氷上トレーニングがなぜ面白いか、その理由をご理解頂けます。


氷上トレーニングのススメ (その1)

I.H.

私は約20以上年前にクルマの免許を取得しましたが、自分のクルマを持ち、運転が楽しくなったのはここ数年のことです。なぜクルマが自分なりに楽しく運転できるようになったのか、今回は氷上トレーニングの体験をまとめてみたいと思います。

私の運転技術はここをご覧になっている皆さんと比較すると、到底未熟なものです。運転技術が未熟な私が自分なりにチャレンジし、自分なりに納得している体験記として読み流していただければ幸いです。

私が初めて氷上での走行を体験したのは、2007年、女神湖で実施されたアウディドライビングスクール(ADE)でした。スクールカーとして用意された四駆のスタッドレス装着車で、氷上でのブレーキングを体験し、走り出すと操作不能になるクルマを体験しただけで終わってしまいました。


翌年の2008年、再び女神湖で実施されたアウディドライビングスクールに参加した後、まだ氷上でのクルマのコントロールができないまま、ラップランドで行われるアウディドライビングスクールに参加することにしました。


なぜ未熟な運転技術の私が参加したのでしょう?それは、アウディのインストラクターに「氷上でのトレーニングが最も効率的に運転技術が向上し、私でも4日間で最終日には氷上をドリフト走行できる」と言われたからです。


半信半疑でしたが、一生に一度と思い、思い切って参加してみることにしました。

ラップランドでは四駆のスパイクタイヤ装着車が準備されていました。プログラムは4日間。2人に1台のクルマが割り当てられ、朝暗いうちから夕方まで毎日走りこみます。

1日目はドリフトのきっかけ作りから始まりました。

短いコースを何度も走り、振り返しドリフトなどの練習を行うのですが、まだクルマのコントロールができない私にそんなことが出来るわけがありません。

 

四駆のスパイクタイヤなのに、何度もスピンし、雪に突っ込み、スタックし、そうかと思えば、ドリフトせずに普通に走ってしまい、インストラクターや同乗者のアドバイスを聞いても自分ではまったく出来ませんでした。


1日が終わるころ、私はここに4日間もかけて何しに来たんだろう?と思うと、情けなくて泣きそうになっていました。

2日目の朝、私は頭を切り替えることにしました。昨日の結果を考えると、私がここにいる間にドリフトなどできるようになるわけがありません。

 

自分への言い訳ではありませんが、「私がここに来たのはドリフトが出来るようになるためではなくて、少しでも運転技術を向上させて日本に帰ったらより安全に運転できるようになる」ことを目的とすることにしました。

この日はコースが少し長くなり、ドリフトが出来る人は楽しそうにクルマを滑らせて遊んでいます。私はインストラクターのアドバイスを聞いたり、同乗していただいたりしながら、もくもくと氷上を走るしかありません。

 

ドリフトが出来ない私はカーブ毎に頭をひねりながらひたすら走り続けました。2日目が終わるころ、なぜかはわかりませんがドリフトのきっかけ作りとクルマのコントロールが、少しずつですができるようになっていました。

3日目もコースがもっと延長され、1日中とにかく走りこみます。前日に少しだけ感覚がわかってきたせいか、この日は気分的に楽に走れるようになりました。上級者の皆さんのような華麗なドリフトはできませんが、ちょっと滑らせたり、ドリフトのまねごとはできるようになっていました。

この日の午後、特別プログラムとして、アイスモービルとアイスカートのイベントが組まれており、気分転換のため私はそちらに参加することにしました。


アイスカートは氷上でカートを走らせるもので、カートはミッドシップの後輪駆動でした。少し練習した後、参加した皆様とレースを行うことになりました。アイスカートは軽く、また、クルマの挙動が分かりやすいので、ドリフトコントロールが容易にでき、走っていてすごく楽しめました。

 

そして、レース終了と言われてピットインすると、なんと私は1位でした。まったく信じられなくて、その時に頂いた手作りの木のメダルは私の宝物になっています。


アイスカートのおかげで気分が良くなった私は、氷上のコースに戻るとクルマを走らせることが楽しめるようになっていました。少しずつですが、お尻を出したり、滑らせたり、クルマをコントロールすることが感覚的にわかったような気がしました。

この日に思ったのは、私は運転技術を理論では理解できていないということでした。

 

ドリフトのきっかけ作りの説明で、「ハンドルを少し右に切った状態でアクセルを踏んでお尻を出して、アクセルを戻して、すぐにハンドルを戻して!」などと言われても、なぜ右か、なぜアクセルをそこで踏むのかわからなければ、順番通りにやってもできるわけがありません。


私がドリフトを出来るようになるためには、理論的にではなく、クルマの状態を理解して今何をすればどうなるか感覚で理解することが必要なのではと思いました。これにはかなり時間がかかりそうな感じがしました。

 

<写真はラップランドで行われたアウディドライビングスクールのもようです。>

(2)へ続く